若者が娘のことを必死になって探していたちょうどそのころ、洞窟に閉じ込められていた娘も又、何とか逃げ出そうと必死になっていました。
若者に会いたい・・もう一度一緒に野山を歩きたい・・会いたい・・・
若者への熱い想いが娘を駆り立てました。きっと若者が心配している。きっと私を探している。娘はいてもたってもいられませんでした。どんなことをしてでも、ここから抜け出さなければ・・・。若者に会いたいと思う気持ちが娘に力を授けてくれました。そして娘は、やっとのおもいで洞窟から逃げ出すことが出来たのです。
と、その時です。
空から一匹の龍が、娘をめがけてまっすぐに舞い降りてきました。そしていきなり娘を背中に乗せたかとおもうと、ふたたび空高く舞い上がったのです。驚いた娘は逃げようとしましたが、空の上ではどうすることも出来ません。でも不思議なことに、龍の背中は広くて、温かくて、やさしくて・・・とても安心していられたのです。それは、若者と一緒にいたときに感じていたのと同じでした。そして娘はやっと気が付いたのです。龍が、毎晩夢に見ていたあの龍であることを、そしていま、自分を背中に乗せて空を飛んでいる龍が大好きなあの若者であることを・・
娘は、若者が龍になってまでも自分を探しに来てくれたことが、嬉しくてなりなせん。このまま・・・永遠にこのまま二人でいたい・・・娘は周りで輝いている星々に強く願いました。
その日から・・・お天気の良い星が輝く夜になると、娘を背中に乗せた一匹の龍が、満天の星空を悠々と飛び回る姿をみかけるようになりました。
今でも、星空を見上げて耳をすますと、龍の背中に乗って楽しそうにしている娘の笑い声が聞こえてくるかもしれません。
・・・完・・・
|